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第九回 [銀河極小戦争]

第 九 回








 知らぬ間にアニプラは眠りに落ちていた。

 そして、久々に彼は子供の頃の夢を見た。アニプラにとって、この頃の記憶はあまり楽しいものではない。

 余談ながら、彼のような犬人間種は、ある一部の星を除けば、最下級の奴隷として扱われる。理由は定かでないが、彼らと対立関係にあった馬人間種による欺瞞工作、または第一次惑星間大戦で敗北したコルト星団に加わっていたことが引き金となったと考えられている。

 四歳の頃のある夜、アニプラ少年は母に連れられて野原を走っていた。

 いくら休みたいと言っても、彼の母は「もう少しの辛抱だから」とやさしく言って息子の手を引いた。

  同じ日の朝、二人の持ち主(「飼い主」と呼ぶ者もいる)の家にアニプラ少年に興味を持ち、高値で買いたいと申し出た男がやってきた。男はセミル(現在の水星)から来た商人で、若い奴隷を買い漁っていた。この手の奴隷商人は、子供を使った売春宿の経営をしていることが多い。

  ギャンブルの借金を返すのに丁度いい、と思ったアニプラの持ち主はすぐ契約書を作成した。

 持ち主と奴隷商人の間で契約が交わされた夜、アニプラの母は翌日に息子が売られることを突然聞かされた。悲しみに暮れるアニプラの母は息子に別れを告げようとしたが、幼い我が子の寝顔を見た途端に自分の愚かさを思い知らされた。

 (この子にだって、幸せに生きる権利はある…)

 アニプラの母は寝ていた息子を起こすと、彼の手を引いて持ち主の家から逃げた。

 隣町まであと三十キロと迫った時、背後から迫る音を耳にして、アニプラの母が振り返った。数キロ先に複数の光が見え、彼女はそれがスピーダーのヘッドライトだと気付いた。

 「どうしたの?」アニプラ少年が母の手を引いて尋ねた。

 彼の母は迫り来るスピーダーの群れに目を奪われており、息子に手を引かれるまで我を失っていた。彼女の心臓は高鳴り、緊張で喉が渇いた。

 「走って!」アニプラの母が再び息子の手を引いて走り出した。隠れる場所を探そうとしたが、野原に隠れる場所などなかった。草は低く、伏せてもすぐに見つかってしまう。

 無駄だと分かっていても、アニプラの母は息子の手を引いて走った。

 背後から迫るエンジン音が次第に鮮明となり、スピーダーに乗っている男たちの怒号が聞こえてきた。

 逃げる二人の息は上がり、脚が重たく感じられて走るのが困難になってきた。ちょうどその時、一台の赤いスピーダーがアニプラ少年の真横を通り抜け、驚いた彼は転んでしまった。

 「アニプラ!」アニプラの母が息子に手を伸ばした。そして、手が息子に届くと同時に彼女は、二人を囲むように走り回る四台のスピーダーに気付いた。

 (そんな…)彼女は絶望した。

 ここで捕まればアニプラの母は地下の作業場に送られ、もう二度と地上に戻れなくなる。そして、彼女の息子は奴隷商人に売られ、小児性愛者たちの餌食にされる。

 スピーダーが停まり、中から武器を持った男たちが降りてきた。計八人。

 「逃げちゃだめだよ。逃げちゃ…」黄色に塗られた回転弾倉式拳銃を持つ男が言った。上半身は裸で、下は白いブリーフしか身に着けていない。格好は貧相だが、アニプラたちの持ち主が雇っている腕の良い傭兵であった。

 「す、すみません。ゆる、ゆるし、許して、下さい!」アニプラの母が声を震わせて男に頼んだ。

 「ボクに言われても困るよぉ~。それに…」ブリーフ姿の傭兵が銃口をアニプラの母に向けた。「ボクの仕事は子供を回収すること。アンタのことは好きにしていいって言われてるしぃ~。」

 アニプラの母は言葉を失った。(殺される?息子の前で…?)

 「さよならぁ~。」

 銃声が鳴り響き、ブリーフ姿の傭兵の顎が吹き飛んだ。彼の部下は呆気に取られ、近づいてくる男の存在に気付くことができなかった。

 その男は親指で撃鉄を下ろし、素早く次の的に銃口を向けて引き金を絞った。彼の動きは滑らかで、そして、正確であった。男は七秒の間に六人を撃ち殺し、大半が銃を持ち上げる前に頭部または胸部を撃たれていた。

 残りの二人が銃を持ち上げた頃、男は弾の切れた銃をホルスターに戻し、別の銃を抜いて相手が発砲する前に頭部を撃ち抜いた。

 犬人間種の親子は震えながら近づいてくる男を見つめた。男の行動は二人を救ったようにも見えたが、ただ単にスピーダーが欲しかっただけの行動かもしれなかった。

 二人を他所に男は、死体から銃弾を取って腰からぶら下げていた袋に詰めた。弾を集め終えると、男が拳銃と傭兵たちが持っていた硬貨をアニプラの母に渡した。

 「スピーダーを使えば、7時間ほどでヤビン港に行けだろう。それに、その金を使えば自由も手に入るはずだ…」

 そう言い残して男は、アニプラたちが逃げてきた街に向かって歩き出した。

 去って行く男の背を見ていたアニプラと彼の母は、男の左腕がないことに気付いた。男は二挺の回転式弾倉拳銃を腰からぶら下げ、右腰の銃のグリップは後ろを向いていたが、左腰の銃は前を向いていた。また、銃身と銃床が短く切り落とされた水平二連の散弾銃が、男の背中にあるホルスターに収められていた。

 アニプラの母は去って行く男の背中に頭を下げ、急いで息子の手を引いてスピーダーに乗り込んだ。

 「アニプラ様…」

 声を聞いて目を開けると、部下の姿が見えた。アニプラは椅子の上で小さく伸びをすると、部下に鋭い視線を送った。

 「どうした?」

 「ボルビスが死にました。」

 この報告にアニプラは驚いた。ボルビスは彼の一番弟子であり、部下の中で一番腕の立つ男であった。

 「誰にやられたんだ?」とアニプラ。

 「例の設計図を持っている者が護衛を雇い、ボルビスを殺したようです。」

 (そんな腕の良い奴がこの星に?)

 「そいつの居場所は分かるか?」

 「はい。探査ロボットで追跡しており、既に『切り込み隊』を送りました。」

 (ボルビスがやられたのなら、『切り込み隊』でも無理だろう…)

 「俺の武器を持って来い。ボルビスの仇は俺が取る…」

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第八回 [銀河極小戦争]

第 八 回








 銃を拾い上げて事務所から外に出た時、エヌラたちは既に二百メートル離れた所にいた。
 
 (逃げ足の速い野郎だ…)
 
 大男の目にスピーダーバイクを降りようとしている若い男性の姿が映った。
 
 (これだ…)

 若い男性が大男に気づくと、大男は男性を射殺してバイクに乗り、エヌラとミアツの後を追った。

 エヌラはミアツの走る速度が次第に落ち、早足くらいの速度になっていることに気づいた。ミアツを見ると、彼女は肩で息をしている。

 「もう…走れない…」ミアツがか細い声で言った。

 「頑張れ!もう少しだ!」

 そう言いながらも、エヌラは近くに乗り物が無いか探していた。彼は地下鉄の入口と五メートル先で停車している回送バスを見つけた。

 (地下鉄がベス―)

 二人の頭上を何かが通り過ぎた。反射的にエヌラがミアツの肩に手を回して身を屈め、背後に目をやった。そこにはバイクに乗って追ってくる大男がいた。

 (もう追いつかれた…)

 エヌラは姿勢を低くしたまま、ミアツの手を掴んで走り出した。彼らの後を追うように光線が地面にめり込んで破片を周囲に散らばせた。

 (クソッ!このままじゃダメだ!)

 エヌラは近くにあったスーパーマーケットに入って裏口を目指した。

 二人がスーパーマーケットに入ったことを確認した大男は、バイクを乗り捨てて店に乗り込んだ。店に入ると大男の真横にあった缶詰の山が破裂し、缶詰の中身が大男の視界を奪った。

 ショックガンはエヌラが狙った通りの効果を生み、彼は再びミアツの手を引いて走り出した。

 「クソー!」

 大男は顔に付着した魚の煮物を取り除き、エヌラが向かったと思われる裏口へ急いだ。

 先に裏口に到着したエヌラとミアツであったが、荷物が裏口に続く道を塞いでいた。

 エヌラが別の裏口を探すために周囲を見渡す。この間に息絶え絶えのミアツは呼吸を整えようとした。が、大男を目にした途端に落ち着き始めていた呼吸が早くなり、咄嗟にエヌラの腕を強く掴んだ。

 「やっと追い込んだ…」大男が散弾型光線銃のポンプを引いて言った。

 「下がってろ…」大男を睨みつけながら、エヌラがミアツを自分の背後に押しやった。

 不適な笑みを浮かべると、大男は光線型散弾銃を床に落として上着の陰に隠していた拳銃をエヌラに見せた。

 「ゲームをしよう。早撃ちだ…」と大男。

 エヌラのショック銃はベルトバックルの位置に収められており、すぐ抜いて撃つことも可能である。この時、エヌラは内なる声を耳にした。

 (もしかしたら、ここで死ぬかもしれない。まだミアツをホテルに連れ込んでないし!それにミニスカートの似合う可愛い女の子、もちろん、生足さ!とデートとして、結婚して、違う若い女の子と浮気して、離婚してバツイチのダンディーな男にな―)

 「どうした?ビビッてるのか?」

 「いや…ちょっと考えたのさ…」背中を伝う一筋の汗を感じながらエヌラが言った。

 「何も考える事などないだろう…さぁ、抜けッ!」

 ミアツはエヌラに勝って欲しかった。そうでなければ、二人は殺される。おそらく、警備会社の職員のように四肢を銃で吹き飛ばされるかもしれない。

 「わかったよ…」

 エヌラが応えると、大男は相手の右手に注目した。その手が動いた瞬間に男は拳銃を抜き、エヌラとミアツの命を奪おうと考えていた。

 しかし、これがそもそもの間違いであった。

 ガチン!という音がした。大男は倉庫内の荷物が落ちたのだろうと思って気にも留めなかった。

 「あばよ…」エヌラが呟いた。

 (動く!)と大男が感じ取った時、彼の目に意外な物が飛び込んできた。

 腰の辺りに置かれていたエヌラの左手が九十度内側に曲がり、手首の辺りから突き出た直径四センチほどの穴が大男の方を向いていた。

 (義手?)

 大男が急いで拳銃を抜き、それと同時にエヌラの義手から眩いばかりの光線が放出された。

 あまりの明るさにミアツは目を閉じ、そして、神に救いを求めた。しばらくして、目を開けると、彼女は信じられない光景を目にした。

 光線を直撃した大男の上半身は蒸発し、直立不動の下半身だけが残されていた。しかし、義手の威力はそれだけに留まらなかった。光線の被害は八キロほど先まで及んでおり、光の通った道がトンネルのようになっていた。

 被害を受けた建物の数はエヌラとミアツがいるスーパーマーケットを含めて九軒、幸い死者は0人であったが、光線で髪の毛や服を燃やされた人が七人いた。

 ミアツがエヌラを見ると、義手を持つ変態男が両膝をついて肩で息をしていた。

 「どうしたの?」ミアツが走り寄る。

 「なんかムラムラしてきましゅた。ちょっと、ここで待ってて!すぐに戻って来ましゅ!」

 そう言って、エヌラが近くにあったトイレに駆け込んで行った。

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第七回 [銀河極小戦争]

第 七 回








 闇が訪れた。

 エヌラの目の前が暗くなり、彼は死んだ、と思った。しかし、そのすぐ後に違う光景が目に飛び込んできた。それは彼を挟むように建ち並ぶ廃墟と目の前に立つ細い目をした小柄の男であった。この景色にエヌラは見覚えがあった。

 「どっちから始末しようか…」
 
 細い目の男が短機関銃の遊底を引いて呟いた。
 
 「俺に構わず…逃げ…ろ…」

 エヌラの背後からかすれた男の声が聞こえた。背後に目を配ると腹部から血を流している男がいた。

 「そんなことできるかよ…」短機関銃を持った男を睨みつけてエヌラが言った。彼はこの場を切り抜ける方法を考えた。

 (試してみる価値はあるだろう…)エヌラが素早く背後に手を伸ばした。

 突然、景色が変わった。

 再び光線型散弾銃を持った大男が現れ、エヌラの右手には露天の武器屋で奪ったショック銃があった。そして、それは大男に向けられている。

 大男はエヌラがショックガンを取り出す動きを確認することができなかった。まるで、魔法を使ったかのようにエヌラがショック銃を取り出したように見えた。大男にとって、エヌラの動きを捉えられず、それにショック銃を向けられたことが悔しかった。

 「小賢しい!」大男が散弾銃をエヌラに向ける。

 (トロい…

 エヌラが大男の胸に向けて引き金を二度引いた。一発は外れたが、二発目は大男の右手に命中した。大男の右手に強い衝撃が走り、光線型散弾銃が床に落ちた。再び引き金を引くこともできたが、ショック銃のバッテリーが切れていた。

 「逃げ…ろ…」

 エヌラの耳にその言葉が蘇ってきた。

 「できる訳ないだろうが!」

 今まで情けない部分しか見せてこなかったエヌラが、突然怒鳴ってミアツの右手首を掴んで走り出した。これにはミアツも驚いた。

 (これが『あのチラ見変態男』なの?)

 「この野郎ォー!」

 背後から殺気のこもった怒鳴り声が飛んできた。この声を聞いた途端にミアツは恐ろしさのあまり、鳥肌が立ち、「殺される」と思った。

 (できるだけ遠くに逃げたいッ!)

 ふと、彼女がエヌラを見ると、先程まで彼の顔に広がっていた恐怖の色が消えていた。

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第六回 [銀河極小戦争]

第 六 回







 電話が切れた。

 (あのジジイ。俺のお楽しみを…。まぁいい。プライベートでミアツさんと付き合えばいいのさ!)

 エヌラが立ち止まってミアツの方を見た。釣られてミアツも立ち止まる。

 「社長が私を呼んでましゅ。」

 「でも、あなたは私の警備中でしょ?」

 「そうでしゅ。もしかしゅると、新しい重要な任務かもしれましぇん。」

 「そういう会社なの?あなたの会社は?それって契約違反じゃないの?」

 (確かに。彼女の言う通りだ。じゃ、社長はなんで?)

  「私にも詳しいことはわかりましぇん。よろしければ、一緒に社長の所に行くましぇんか?」

  ミアツにとって、目を見ずに自分の胸をチラ見してくる変態男の申し出は願ってもいないものであった。

 (この男からもっと腕の良い、イケメンのボディーガードに変えてもらおう。)

  「お願いします。」

  二人はタクシーを捉まえてエヌラが勤める警備会社に向かった。その警備会社の事務所は約八百メートル離れた場所にあり、彼らはすぐ目的地に到着した。全くお金を持っていないエヌラはミアツにタクシー代を払わせ、彼女は新しいボディーガードを頼もうと、エヌラよりも早く事務所に乗り込んだ。エヌラは彼女の腰巾着の様に小走りでミアツの後を追った。

  事務所に入った時、ミアツの目に飛び込んで来たものは、おびただしい量の血と六つの死体であった。あまりにも突然のことであり、ミアツは言葉を失った。何事かとエヌラが事務所の中を覗き込んで、ミアツも見た地獄絵図を目撃した。彼の場合、ミアツと違って悲鳴を上げた。

  「キャー!」

  すると、誰かがエヌラの左脚を掴んだ。エヌラが再び悲鳴を上げ、左脚をバタつかせて手を振り払おうとした。

  ミアツがエヌラの脚を見ると、血だらけの男がいた。男はかすれそうな声で「助けて」と言っていた。

 エヌラは助けを求める男の顔面を蹴り飛ばし、事務所から飛び出そうとした。すると、事務所の奥から銃声が聞こえ、次にエヌラの真横にあった壁に大きな穴が開いた。戦意を喪失しているエヌラはその場で腰を抜かしてしまった。ミアツもエヌラと同じく腰を抜かしてその場に座り込んだ。

  「だ~れ~だ~?」

  部屋の奥から大男が現れた。エヌラはこの男に見覚えがあった。この大男はエヌラと一緒に警備会社の面接に来ていた、大量のナイフと光線型散弾銃を持っていた男だった。

  「お前がエヌラか…間抜けだな…」

  大男が散弾型光線銃のポンプを引き、エネルギーのチャージを始めた。

 エヌラとミアツは罠にかかった獣のように、ただ怯えて近付いてくる大男を見ることしかできなかった。

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第五回 [銀河極小戦争]

第 五 回







 この時、エヌラも河馬に似た女性も気付かなかったが、女性が探していた『エヌロ』という人物は、この女性を見ると忍び足で逃げていた。

 エヌロという男はエヌラと名前が似ているが、全くの他人である。彼は出会い系サイトで見つけた女性と会って、エヌラ同様、ホテルに連れ込もうと考えていた。ゆえに目的はエヌラと似ていた。

  「いえ、違います。」できるだけ女性と目を合わせないようにしてエヌラが言った。

  「本当に?照れてるんじゃないの?」河馬に似ている女性がエヌラの視線に入るよう、彼の顔を覗き込んだ。

  (んなぁ、わけねぇだろ!気持ち悪い女だ。早く消えろ!)心の中でエヌラは何度も悪態ついた。

  「大丈夫。私はなんとも思ってないから…」

  (もう決めた…。撃とう。それしかない!)

  エヌラは武器屋で奪ったショック銃の銃把を握り、いつでも抜き取れる態勢に入った。その時、彼のポケットから社員証が落ちた。

  「私みたいな可愛くて綺麗な子と出会えてラッキーよ。さぁ、デートしましょう!」

  陸水両棲可能な動物に似ている女性がエヌラの右腕を引っ張ろうとした。
 
 (今だぁ!)
 
 銃を女性に向けようとした時、誰かが彼の肩を叩いた。虚を突かれたエヌラは驚き、素早く銃をタキシードの下に隠して振り返った。

 そこにはエヌラ好みの顔をした女性が立っていた。反射的にエヌラは彼女の脚を見た。しかし、女性はジーンズ姿であり、エヌラは酷く落胆した。

  (これなら、河馬女に紙袋を被せた方が―いや、俺はそこまで落ちぶれていない。この美女にスカートを履かせれば…いやいや、脱がすなら関係無いではないか!)

  「警備会社の方ですよね?」エヌラの肩を叩いた女性が言った。

  エヌラは執拗に腕を掴む女の腕を振り解き、目にも止まらぬ速さで河馬に似た女性をショック銃で撃った。撃たれた河馬は悲鳴を上げることなく、地面に崩れ落ちた。

  「そうだす。」エヌラが言った。緊張によって噛んでしまったのだ。

  「よかった!ずっと探していたんです。」

  「流石、お嬢しゃん。やっぱり、僕がイケメンのボディーガードだから、見つかってすまったのかな?」

  エヌラは好みの女性を見つけると気障な態度を取り、また滑舌が悪くなる癖があった。

  「いえ、あなたが警備会社の社員証を落としたので分かったんです。」

  女性がエヌラに拾った社員証を渡した。エヌラは再び落胆したが、まだこの女性をホテルに連れ込むという、卑劣な考えは捨てていなかった。

 煩悩の塊であることを自負しているエヌラでも、突然女性をホテルに連れ込むのは難しいと考えた。

 (少し紳士的な所を見せた方がいいだろう…)
 
 「お嬢しゃん、場所を移しゅてお話しを伺いまひょう。」

 エヌラが左肘を曲げ、女性が左腕を掴めるようにした。しかし、彼女はそれを無視して、エヌラの横に並んだ。

 「わかりました。」

 (可愛い子猫ちゃんだ。照れてるんだ…)

 エヌラの思考は彼が気絶させた河馬に似た女性とあまり変わらなかった。違う点と言えば、それを声に出さない点である。

 「私の名前は『エヌラ』。お嬢しゃん、あなたは?」

 「『ミアツ』と言います。」

 「なるほど、ミアツしゃん。何故、私を必要としゅるのでしゅか?」

 エヌラの自意識過剰な言い方にミアツは段々と腹が立ってきた。

 「私が警備会社に仕事を依頼しようと思ったのは…」

 ここでミアツは口を止め、彼女は適切な言葉を探した。

 「そう、ストーカー対策のためです。」

 「ストーカー?卑劣ナ奴ラダ。大丈夫。私ガ、アナタヲ、必ズ守リマスカラ…」エヌラがミアツの肩に手を回した。
しかし、ミアツは自分の右肩に置かれた汚らわしいエヌラの手を叩き落とした。

 (まだ、恥ずかしがっているな、子猫ちゃん。でも、大丈夫。すぐ僕の虜になるさ!)

 エヌラがミアツの身体をチラ見した。彼の好きな脚は見えないが、脚の次に好きな胸の膨らみで視線が止まった。ミアツは薄桃色のパーカーに青いジーンズ、少し泥を被った白いスニーカー姿であった。

 (上の下って感じだな…。脱がせれば、問題ない。)

 煩悩の塊と化していたエヌラは自分にそう言い聞かせた。その時、彼の太腿に振動が訪れた。

 「失礼…」

 気取った調子でエヌラが携帯電話を取り出して電話に出た。電話の相手はエヌラが勤める警備会社の社長であった。

 「エヌラか?すぐ会社に戻って来い!」

 社長が怒鳴った。しかし、その声にはどこか怯えているように震えていた。

 「しかし社長、私は最重要任務の実行中でしゅ。」

 「いいから戻って来いッ!」

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第四回 [銀河極小戦争]

第 四 回






 ここで少し、余談を挟みたい。

  「河馬」

  という動物はアフロユーラシアの淡水域、すなわち、アフリカ大陸とユーラシア大陸の塩分濃度が低い水に生息する水陸両棲可能な動物である。河馬は現在、アフリカにのみ残存している。この動物の学術名は、

  「Hippopotamus amphibius」

  カタカナにすると、

 
 「ヒプポポタムス アムフィビウス」
 
 である。
  
 河馬はその外見から「穏和で動きの鈍い草食動物」といった印象を持たれていたが、新人類のマスメディアが視聴率を得るために様々な動物番組を放送したため、「獰猛な動物」という真の姿が広まった。

  新人類のマスメディアについて触れたので、少しだけ旧人類のマスメディアについて触れたい。

  旧人類は新人類よりも優れたテクノロジーを持っていたので、既に新人類が使うテレビは捨てていた。

  彼らはテレビよりもインターネットに近い〈デジタリア〉を好んで使っており、マスメディアの数は星の数ほどあった。このようにマスメディアが増えた理由は、自由に報道できるよう規制が緩和されたからであった。

  規制緩和はマスメディアの競争率を高め、これを脅威と感じた既存のマスメディアは規制緩和に反対し、新しく出てきた勢力を排除する運動を始めた。この運動に民衆は反対し、既存のマスメディアに対して抗議運動を開始した。 

  既存のマスメディアは、規制緩和の賛成派を「テロリスト」だと宣伝し、さらなる反発を買った。既存のメディアは自分で自分の首を絞め、最終的に自滅した。

  彼らが自滅したことによって、様々な形のマスメディア機関が誕生した。その中には嘘の情報を流す者、コンピューターウィルスの配信を目的とする自称マスメディアも存在した。

  旧人類史上、最も優れたマスメディアの研究家『コスメディ・アーガハ』は、著書『マスメディアの進化と衰退』で以下のように述べている。

  「『報道の自由に関する法』はマスメディアに新風を吹き込んだかもしれない。だが、この制度を悪用し、他の星を侵略しようと偽情報を送る会社や、ウィルスの試作品を試そうとする犯罪者も現れてきた。このような事態の解決には、これら違法行為を罰する条文を入れるべきである。」

  アーガハが書いている通り、違法行為を処罰する必要があった。しかし、当時の政府とマスメディアの大半は盗賊団『スペース・ア・ゴー・ゴー』によって取り仕切られていたため、条文の追加は不可能であった。それに〈デジタリア〉は、新人類のインターネット同様、脆弱性が多かった。つまり、処罰する条文があっても、違法行為を完全に無くすことはできない。また、逆に犯罪の質を上げる可能性を孕んでいた。

  話しが脱線し過ぎたため、元に戻したい。

  エヌラの前に現れた女性は『河馬』ではなく、『河馬』に似た人間であった。
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第三回 [銀河極小戦争]

第 三 回





 「何をお探しですか?」

 黄ばんだ白いタオルを頭に巻いた中年の男がエヌラに尋ねた。

 今、エヌラは露天の武器屋にいる。彼は新しいバイト先を見つけたが、そこはボディーガード会社であり、有名な『グスタム・セキュリティー』の下請け会社であった。

 この会社がエヌラに支給したものは、社員証とプラスチックのバッジだけであった。会社は、武器は各自で用意しろと言った。彼と一緒に面接に来ていた大男は大量のナイフと散弾型光線銃を持っていたが、エヌラは何も持っていなかった。

 エヌラは格安で手に入る武器屋を探し、やっと露店の武器屋を探し出した。

 「おやじ、お勧めの品は何だ?」エヌラが青いビニールシートの上に並べられている武器を眺めた。

 「お勧めの品ですか…」

 武器屋の店主は、いい「カモ」が来たぜ、と思っていた。

 (高値でガラクタを売りつけてやろう。)

 店主はエヌラの身なりを見た。全身赤タイツ姿に白いリュックサックを背負ったエヌラは、とてもカネを持っているようには見えなかった。それにプロにも見えなかった。

 (適当なことを言ってガラクタ拳銃を売りつけて追い払うか…。いや、その前に礼儀として「カモ」の好みを聞いてみるとするか…。)

 「お客さんは、どのような武器をお探しですか?」

 「そうだな…光線銃が欲しい。できれば、小型の…」

 (光線銃か、貧乏人のクセにしゃれた物を欲しがる野郎だ。威力の弱い、ご婦人向きのショック銃を五百ベルガー[約五万円]で売りつけよう。)

 「これはどうでしょうか?」

 中年の店主が小さな緑色の水鉄砲に似た拳銃をエヌラに渡した。

 「五百ベルガーでお安いですよ。それに威力も充分です。象も一撃で倒せますよ!」

 「なるほど…。しかし、私はそこまで金を持っておらんのだ。」

 「いくらお持ちですか?」

 「十五ベルガーだ。」

 (十五ベルガー[約千五百円]?そんなはしたガネで銃を買おうと考えているのか、この野郎は…。ショック銃も買えないじゃねぇか!)

 「その予算で光線銃は難しいですよ、お客さん。」

 それを聞いたエヌラはショック銃で店主の腕を撃った。彼はショック銃の性能を知っていたので怯むことはなかった。逆に次は股間を撃ってやろうと、銃口を股間へ向けた。

 「この野郎!」店主が拳銃型光線銃を取り出し、エヌラに向けて引き金を引いた。

 だが、エヌラの方が早かった。素早く引き金を絞り、電気ショックが店主の股間に流れた。

 黄ばんだタオルを頭に巻く店主が「あひぃ~」と叫びながら倒れた。転倒する途中、店主は銃の引き金を引いて自分のテントに複数の穴を開け、最終的に地面に頭をぶつけて気を失った。これによって辺りが騒がしくなった。

 (この場から逃げなければ…)

 エヌラはショック銃を持ったまま走り出した。

 人通りが少ない道に入って追っ手がいないことを確認すると、エヌラは薄暗い路地に滑り込んだ。そこで彼は全身赤タイツを脱ぎ、リュックサックから白いタキシードを取り出した。

 これからエヌラは五キロ離れた広場で依頼人と会う約束をしている。

 白いタキシードを着たエヌラは、親戚の披露宴で花束を渡す子供のようであった。このタキシードは近所の貸衣装屋から無断で拝借してきたものであるから、依頼人と合流してホテルに連れ込んだら捨てるつもりであった。

 エヌラとしては、できるだけ人目に付かないように移動したかった。しかし、込み上げてくる性欲に敗けた彼は、スピーダーバイクを盗んで待ち合わせ場所へ急いだ。多くの人々が白いタキシード姿の男を目撃し、その情報はすぐ貸衣装屋の耳にも入ったし、エヌラの同棲相手であるアーマ・ナマズの耳にも届いた。

 広場で依頼人を待つエヌラは、その場で一番浮いた存在になっていた。ここにはSAGGのメンバーも多数いたが、人々はエヌラのコスプレに目を奪われた。

 注目されることを好むエヌラは目を閉じ、両手をスラックスのポケットに入れ、電子広告宣伝板に背をあずけていた。
 
 (俺ってカッコイイィ!)

 待つ間、エヌラは依頼人がどのような美女か妄想を膨らませていた。

 (絶対にミニスカートで来るだろう。そして、生足だ。)

 この男は病的なほどに生足、生足と頭の中で唱えていた。また、彼は常に妄想と現実に大きな差があることを知っていながらも、これから出会える人物が美女だと信じていた。

 「エヌロさんですか?」

 可愛らしい女性の声がエヌラの前から聞こえてきた。

 女性の声を聞いて有頂天になっていたエヌラは、女性が人違いをしていることに気付いていなかった。

 (来た!)

 エヌラが目を開けて女性の身体を見た。まず、彼の目に飛び込んできたのはピンク色のスニーカーと小麦色の細い脚であった。彼が望んだ通りに女性は生足であり、胸を高鳴らせて視線を上げた。次に見えたのはデニムのミニスカート、さらに視線を上げるとライトグリーンのTシャツが見えた。

 (これは可愛いに違いない。)エヌラは確信し、女性の顔に視線を移動させた。そこで彼が見た物は「河馬」だった。

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第二回 [銀河極小戦争]

第 二 回





 その小型ポットは卵型で、成人男性がやっと一人入れる程の大きさであった。

 このポッドは海に落ち、誰もが流れ星か宇宙ゴミだと思って引き揚げようとはしなかった。代わりに人々が注目したのは、ここから数十キロ先の空港に着陸した宇宙船であり、この船には盗賊団が乗っていた。

 盗賊団の名前は『スペース・ア・ゴー・ゴー(SAGG)』。

 彼らは一般市民のみならず、報道機関にも注目されている。その理由は、この盗賊団が様々な星で奴隷を解放しているからである。奴隷たちや奴隷制に反対する勢力はSAGGを応援していた。

 宇宙一有名な盗賊団の長は、『カズヤン・ロドリド・テカテリー・サバンナ・ランダスベルデブ』という丸々と太った豚の様な男であった。しかし、報道機関とSAGGによる宣伝によって、彼は英雄であり、またイケメンとなっていた。

 この男の経歴は謎に包まれている。誰もカズヤンの秘密を知る者はいない。正確には、知っている者は皆殺された。

 数時間前、カズヤンがある施設への攻撃を命じた。その施設には手に入れれば全銀河を支配できると言われている〈マグナム〉の設計図があった。しかし、その設計図を持った者が施設から宇宙ポッドに乗って逃亡した。カズヤンはそのポッドを追っている。

 施設から放たれた宇宙ポッドは五機。

 SAGGは設計図を持った者を探し出すために、SAGG最強の探し屋『アニプラ』を派遣した。
アニプラは土星で生まれた犬人間であり、嗅覚が優れている。かつて奴隷の身分であったアニプラは、SAGGの宣伝用に奴隷から解放され、幹部にまで指名された。一般大衆はこのようなシンデラストーリーに弱く、SAGGの評判はこの頃から良くなった。

 今、アニプラは巨大モニターに映し出されているカズヤの前で跪いていた。

 「設計図は手に入れたのか?」

 カズヤンがチョコレートを貪りながら言い、かじる度にチョコの破片が彼の汗ばんだ腹の上に落ちた。

 「ポッドは回収できましたが、中身は空でした。」

 「何?」

 盗賊団長の口が開くと同時に、カメラにチョコレートの破片が付着した。

 「カズヤン様、安心してください。この星に落ちたポッドが最後です。それに部下の報告を聞いた限り、他のポッドの中は無人で、一応捜索はしましたが、設計図はありませんでした。ゆえに奴はここにいると思われます。」

 「そうか…。では、頑張れ。私はこれからキャバクラに行く。終わったら、報告しろ。」

 「了解しました。」

 モニターからカズヤンが消え、現在いる星の基本データや町に出て調査を行っている部下たちの情報が表示された。

 (あの豚は見るだけで反吐が出そうになる。今はアイツより、設計図を持ちだしたクソ野郎を捕まえるのが先決か…。早くメス犬たちと戯れたいもんだ。)

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第一回 [銀河極小戦争]

第 一 回



 エヌラの双眸が標的を捕えた。

 標的は二人。

 夜のとばりはエヌラの味方であった。闇はエヌラの姿を隠し、標的から見られることはなかった。彼は慎重に足音を押し殺して標的を追い続けた。

 標的が会話を終え、二手に分かれようとしていた。

 (今だ…)

 エヌラが動こうとした瞬間、標的の前に4人乗りスピーダーが停車した。スピーダーのドアが開き、中からトレンチコートを着た中年男が出てきた。

 エヌラは右足にかけていた力を抜き、目の前で起きていることを見守った。

 二人の標的はトレンチコートの男を見てそわそわし始めた。エヌラは耳を澄ませて標的たちの会話を聞いた。

 「君たち、何しているの?」トレンチコートの男が言った。

 「仕事の帰りです。」標的の一人が恐る恐る答えた。

 「じゃ、疲れてるでしょ?送ってあげるよ。」

 「いえ、もうすぐ家なので…」

 エヌラはトレンチコート男の声に聞き覚えがあった。しかし、誰かまでは思い出せない。

 「遠慮はいらない。さっさ、乗って、乗って!」男が標的の一人の手を掴んだ。

 「やめてください!」

 二人の女性が男の手を振り切って走り出した。

 (何てことだ。)

 女性たちが自分の隠れている方に向かって走ってきた。ここでエヌラはふと名案を思いついた。

 (標的がこちらに向かってくるのなら、その機に乗じて仕留めてしまおう。)

 足音が近付いてくる。

 (もうすぐだ。)

 エヌラは襲撃の準備を整えた。

 「待ってくれ!」トレンチコートの男が大声を上げて女性たちを追う。

 (タイミングが悪い!もしかすると男に姿を見られるかもしれない。では、いつもと違う方法でやるしかない…)

 冷静にエヌラは陰の中で体勢を変え、いつでも飛び出せる準備をした。足音がエヌラのすぐ側まで迫る。

 (今だッ!)

 エヌラが建物の陰から飛び出し、標的たちに背を向け、ズボンを脱いで尻を突きだした。

 この時、エヌラは形容し難い快感を得ていた。そして、彼はこの次に上がる甲高い悲鳴がその快感を高めると知っていた。だが、エヌラの期待していた悲鳴は上がらなかった。不思議に思って振り返る。

 誰もいない。

 呆然としたまま、エヌラは日の出までそこに立ち尽くしていた。

 (あの三人はどこへ?)

 三人はエヌラの隠れていた陰の一本前の道を曲がっていた。二人の女性はパトロール中の警察官に保護され、トレンチコート男は逮捕された。

 余談ながら、この男はエヌラがコンビニでアルバイトをしていた時の先輩であった。

 エヌラは静かにズボンを上げて自宅へ戻った。

 彼の家は大型商業施設『癒着』の地下駐車場にある。そこは家というよりも箱と言った方が正しい。駐車場の端に置かれた段ボール製の家に入ると、同棲相手の『アーマ・ナマズ』が彼を出迎えてくれた。

 「どうだった?」ナマズがお湯をマグカップに入れてエヌラに手渡した。

 「いつもと変わらないよ…」コタツに潜り込んでエヌラがお湯を啜った。

 ナマズの問いは、エヌラが夜に行った露出行為では無く、アルバイトの話しであった。

 今のエヌラにとってナマズの質問はどうでもよかった。何よりも失敗したことが悔しかった。それに彼は四日前にアルバイトをクビになっていた。理由は女性従業員に対するセクハラ発言であった。

 エヌラの返事を聞いた全身黒タイツ姿のナマズは、部屋の隅に戻って内職の続きを始めた。彼は今、ボールペンの芯詰めを行っている。

 二人が住む、いや、身を潜めている段ボール小屋は縦二メートル、幅が五メートルで、外壁を灰色に塗っていた。遠くから見れば段ボール小屋は駐車場の壁と一体になって見える。

 (新しい職を探さないと、ナマズにばかり負担を強いることになる。)

 エヌラは毎日五秒間、新しい職について真剣に考えるが、すぐ女性のことを考える。だが、今日は違った。彼は真面目に転職サイトで職を探した。

 (接客業は俺向きじゃないから却下だ。できれば女性スタッフが多い場所がいい。だから、建設関係も無理だ。しかし、そうなるとやはり接客業かもしれない。例えばレストラン。あそこなら、制服姿の女の子を毎日拝める可能性が高くなる。そうなれば、女性にスカートを強制している店に応募すれば天国だ。)

 生足。

 エヌラにとって女性の足は神よりも神聖なものであった。ここでエヌラはレストラン、またはスカート着用を義務付けている店を探すことにした。

 そして、エヌラは二つの店を見つけた。彼はその店に行ったことがあり、店員がスカート着用を強制されていることを知っていた。

 (ここいしかない。履歴書を送ろう。)

 エヌラが履歴書を送信しようとした時、彼の目がアルバイト応募資格のページで止まった。そこには「男子禁制」と書かれていた。

 (クソ!なんてことだ。違うところを探すしかない。)

 エヌラは転職サイトのトップページに戻り、検索のボックスに「短期アルバイト、高給」と入力した。すると、先程まで無かった募集が掲載されていた。

 『強くて逞しい男性を求む! 一緒に美女を守ろう!』

 とりあえずエヌラはこのフレーズに惹かれ、その会社へ履歴書を送信した。

 データがその会社に届いた時、彼の住む星に小型ポッドが墜落した。
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