第六回 [銀河極小戦争]

第 六 回







 電話が切れた。

 (あのジジイ。俺のお楽しみを…。まぁいい。プライベートでミアツさんと付き合えばいいのさ!)

 エヌラが立ち止まってミアツの方を見た。釣られてミアツも立ち止まる。

 「社長が私を呼んでましゅ。」

 「でも、あなたは私の警備中でしょ?」

 「そうでしゅ。もしかしゅると、新しい重要な任務かもしれましぇん。」

 「そういう会社なの?あなたの会社は?それって契約違反じゃないの?」

 (確かに。彼女の言う通りだ。じゃ、社長はなんで?)

  「私にも詳しいことはわかりましぇん。よろしければ、一緒に社長の所に行くましぇんか?」

  ミアツにとって、目を見ずに自分の胸をチラ見してくる変態男の申し出は願ってもいないものであった。

 (この男からもっと腕の良い、イケメンのボディーガードに変えてもらおう。)

  「お願いします。」

  二人はタクシーを捉まえてエヌラが勤める警備会社に向かった。その警備会社の事務所は約八百メートル離れた場所にあり、彼らはすぐ目的地に到着した。全くお金を持っていないエヌラはミアツにタクシー代を払わせ、彼女は新しいボディーガードを頼もうと、エヌラよりも早く事務所に乗り込んだ。エヌラは彼女の腰巾着の様に小走りでミアツの後を追った。

  事務所に入った時、ミアツの目に飛び込んで来たものは、おびただしい量の血と六つの死体であった。あまりにも突然のことであり、ミアツは言葉を失った。何事かとエヌラが事務所の中を覗き込んで、ミアツも見た地獄絵図を目撃した。彼の場合、ミアツと違って悲鳴を上げた。

  「キャー!」

  すると、誰かがエヌラの左脚を掴んだ。エヌラが再び悲鳴を上げ、左脚をバタつかせて手を振り払おうとした。

  ミアツがエヌラの脚を見ると、血だらけの男がいた。男はかすれそうな声で「助けて」と言っていた。

 エヌラは助けを求める男の顔面を蹴り飛ばし、事務所から飛び出そうとした。すると、事務所の奥から銃声が聞こえ、次にエヌラの真横にあった壁に大きな穴が開いた。戦意を喪失しているエヌラはその場で腰を抜かしてしまった。ミアツもエヌラと同じく腰を抜かしてその場に座り込んだ。

  「だ~れ~だ~?」

  部屋の奥から大男が現れた。エヌラはこの男に見覚えがあった。この大男はエヌラと一緒に警備会社の面接に来ていた、大量のナイフと光線型散弾銃を持っていた男だった。

  「お前がエヌラか…間抜けだな…」

  大男が散弾型光線銃のポンプを引き、エネルギーのチャージを始めた。

 エヌラとミアツは罠にかかった獣のように、ただ怯えて近付いてくる大男を見ることしかできなかった。

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