第五回 [銀河極小戦争]
第 五 回
この時、エヌラも河馬に似た女性も気付かなかったが、女性が探していた『エヌロ』という人物は、この女性を見ると忍び足で逃げていた。
エヌロという男はエヌラと名前が似ているが、全くの他人である。彼は出会い系サイトで見つけた女性と会って、エヌラ同様、ホテルに連れ込もうと考えていた。ゆえに目的はエヌラと似ていた。
「いえ、違います。」できるだけ女性と目を合わせないようにしてエヌラが言った。
「本当に?照れてるんじゃないの?」河馬に似ている女性がエヌラの視線に入るよう、彼の顔を覗き込んだ。
(んなぁ、わけねぇだろ!気持ち悪い女だ。早く消えろ!)心の中でエヌラは何度も悪態ついた。
「大丈夫。私はなんとも思ってないから…」
(もう決めた…。撃とう。それしかない!)
エヌラは武器屋で奪ったショック銃の銃把を握り、いつでも抜き取れる態勢に入った。その時、彼のポケットから社員証が落ちた。
「私みたいな可愛くて綺麗な子と出会えてラッキーよ。さぁ、デートしましょう!」
陸水両棲可能な動物に似ている女性がエヌラの右腕を引っ張ろうとした。
(今だぁ!)
銃を女性に向けようとした時、誰かが彼の肩を叩いた。虚を突かれたエヌラは驚き、素早く銃をタキシードの下に隠して振り返った。
そこにはエヌラ好みの顔をした女性が立っていた。反射的にエヌラは彼女の脚を見た。しかし、女性はジーンズ姿であり、エヌラは酷く落胆した。
(これなら、河馬女に紙袋を被せた方が―いや、俺はそこまで落ちぶれていない。この美女にスカートを履かせれば…いやいや、脱がすなら関係無いではないか!)
「警備会社の方ですよね?」エヌラの肩を叩いた女性が言った。
エヌラは執拗に腕を掴む女の腕を振り解き、目にも止まらぬ速さで河馬に似た女性をショック銃で撃った。撃たれた河馬は悲鳴を上げることなく、地面に崩れ落ちた。
「そうだす。」エヌラが言った。緊張によって噛んでしまったのだ。
「よかった!ずっと探していたんです。」
「流石、お嬢しゃん。やっぱり、僕がイケメンのボディーガードだから、見つかってすまったのかな?」
エヌラは好みの女性を見つけると気障な態度を取り、また滑舌が悪くなる癖があった。
「いえ、あなたが警備会社の社員証を落としたので分かったんです。」
女性がエヌラに拾った社員証を渡した。エヌラは再び落胆したが、まだこの女性をホテルに連れ込むという、卑劣な考えは捨てていなかった。
煩悩の塊であることを自負しているエヌラでも、突然女性をホテルに連れ込むのは難しいと考えた。
(少し紳士的な所を見せた方がいいだろう…)
「お嬢しゃん、場所を移しゅてお話しを伺いまひょう。」
エヌラが左肘を曲げ、女性が左腕を掴めるようにした。しかし、彼女はそれを無視して、エヌラの横に並んだ。
「わかりました。」
(可愛い子猫ちゃんだ。照れてるんだ…)
エヌラの思考は彼が気絶させた河馬に似た女性とあまり変わらなかった。違う点と言えば、それを声に出さない点である。
「私の名前は『エヌラ』。お嬢しゃん、あなたは?」
「『ミアツ』と言います。」
「なるほど、ミアツしゃん。何故、私を必要としゅるのでしゅか?」
エヌラの自意識過剰な言い方にミアツは段々と腹が立ってきた。
「私が警備会社に仕事を依頼しようと思ったのは…」
ここでミアツは口を止め、彼女は適切な言葉を探した。
「そう、ストーカー対策のためです。」
「ストーカー?卑劣ナ奴ラダ。大丈夫。私ガ、アナタヲ、必ズ守リマスカラ…」エヌラがミアツの肩に手を回した。
しかし、ミアツは自分の右肩に置かれた汚らわしいエヌラの手を叩き落とした。
(まだ、恥ずかしがっているな、子猫ちゃん。でも、大丈夫。すぐ僕の虜になるさ!)
エヌラがミアツの身体をチラ見した。彼の好きな脚は見えないが、脚の次に好きな胸の膨らみで視線が止まった。ミアツは薄桃色のパーカーに青いジーンズ、少し泥を被った白いスニーカー姿であった。
(上の下って感じだな…。脱がせれば、問題ない。)
煩悩の塊と化していたエヌラは自分にそう言い聞かせた。その時、彼の太腿に振動が訪れた。
「失礼…」
気取った調子でエヌラが携帯電話を取り出して電話に出た。電話の相手はエヌラが勤める警備会社の社長であった。
「エヌラか?すぐ会社に戻って来い!」
社長が怒鳴った。しかし、その声にはどこか怯えているように震えていた。
「しかし社長、私は最重要任務の実行中でしゅ。」
「いいから戻って来いッ!」
この時、エヌラも河馬に似た女性も気付かなかったが、女性が探していた『エヌロ』という人物は、この女性を見ると忍び足で逃げていた。
エヌロという男はエヌラと名前が似ているが、全くの他人である。彼は出会い系サイトで見つけた女性と会って、エヌラ同様、ホテルに連れ込もうと考えていた。ゆえに目的はエヌラと似ていた。
「いえ、違います。」できるだけ女性と目を合わせないようにしてエヌラが言った。
「本当に?照れてるんじゃないの?」河馬に似ている女性がエヌラの視線に入るよう、彼の顔を覗き込んだ。
(んなぁ、わけねぇだろ!気持ち悪い女だ。早く消えろ!)心の中でエヌラは何度も悪態ついた。
「大丈夫。私はなんとも思ってないから…」
(もう決めた…。撃とう。それしかない!)
エヌラは武器屋で奪ったショック銃の銃把を握り、いつでも抜き取れる態勢に入った。その時、彼のポケットから社員証が落ちた。
「私みたいな可愛くて綺麗な子と出会えてラッキーよ。さぁ、デートしましょう!」
陸水両棲可能な動物に似ている女性がエヌラの右腕を引っ張ろうとした。
(今だぁ!)
銃を女性に向けようとした時、誰かが彼の肩を叩いた。虚を突かれたエヌラは驚き、素早く銃をタキシードの下に隠して振り返った。
そこにはエヌラ好みの顔をした女性が立っていた。反射的にエヌラは彼女の脚を見た。しかし、女性はジーンズ姿であり、エヌラは酷く落胆した。
(これなら、河馬女に紙袋を被せた方が―いや、俺はそこまで落ちぶれていない。この美女にスカートを履かせれば…いやいや、脱がすなら関係無いではないか!)
「警備会社の方ですよね?」エヌラの肩を叩いた女性が言った。
エヌラは執拗に腕を掴む女の腕を振り解き、目にも止まらぬ速さで河馬に似た女性をショック銃で撃った。撃たれた河馬は悲鳴を上げることなく、地面に崩れ落ちた。
「そうだす。」エヌラが言った。緊張によって噛んでしまったのだ。
「よかった!ずっと探していたんです。」
「流石、お嬢しゃん。やっぱり、僕がイケメンのボディーガードだから、見つかってすまったのかな?」
エヌラは好みの女性を見つけると気障な態度を取り、また滑舌が悪くなる癖があった。
「いえ、あなたが警備会社の社員証を落としたので分かったんです。」
女性がエヌラに拾った社員証を渡した。エヌラは再び落胆したが、まだこの女性をホテルに連れ込むという、卑劣な考えは捨てていなかった。
煩悩の塊であることを自負しているエヌラでも、突然女性をホテルに連れ込むのは難しいと考えた。
(少し紳士的な所を見せた方がいいだろう…)
「お嬢しゃん、場所を移しゅてお話しを伺いまひょう。」
エヌラが左肘を曲げ、女性が左腕を掴めるようにした。しかし、彼女はそれを無視して、エヌラの横に並んだ。
「わかりました。」
(可愛い子猫ちゃんだ。照れてるんだ…)
エヌラの思考は彼が気絶させた河馬に似た女性とあまり変わらなかった。違う点と言えば、それを声に出さない点である。
「私の名前は『エヌラ』。お嬢しゃん、あなたは?」
「『ミアツ』と言います。」
「なるほど、ミアツしゃん。何故、私を必要としゅるのでしゅか?」
エヌラの自意識過剰な言い方にミアツは段々と腹が立ってきた。
「私が警備会社に仕事を依頼しようと思ったのは…」
ここでミアツは口を止め、彼女は適切な言葉を探した。
「そう、ストーカー対策のためです。」
「ストーカー?卑劣ナ奴ラダ。大丈夫。私ガ、アナタヲ、必ズ守リマスカラ…」エヌラがミアツの肩に手を回した。
しかし、ミアツは自分の右肩に置かれた汚らわしいエヌラの手を叩き落とした。
(まだ、恥ずかしがっているな、子猫ちゃん。でも、大丈夫。すぐ僕の虜になるさ!)
エヌラがミアツの身体をチラ見した。彼の好きな脚は見えないが、脚の次に好きな胸の膨らみで視線が止まった。ミアツは薄桃色のパーカーに青いジーンズ、少し泥を被った白いスニーカー姿であった。
(上の下って感じだな…。脱がせれば、問題ない。)
煩悩の塊と化していたエヌラは自分にそう言い聞かせた。その時、彼の太腿に振動が訪れた。
「失礼…」
気取った調子でエヌラが携帯電話を取り出して電話に出た。電話の相手はエヌラが勤める警備会社の社長であった。
「エヌラか?すぐ会社に戻って来い!」
社長が怒鳴った。しかし、その声にはどこか怯えているように震えていた。
「しかし社長、私は最重要任務の実行中でしゅ。」
「いいから戻って来いッ!」
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