第十四回 [銀河極小戦争]
第 十 四 回
しばらく順調に歩き続けていた〈彼〉であったが、突然の頭痛に襲われて歩くスピードを落とした。頭痛は次第に激しくなり、吐き気を催すほど強さを増した。
(クソッタレめッ!)
「ちょっと待ってよ!」ミアツが〈彼〉の右肩に触れた。
すると、糸の切れた人形のように〈彼〉は地面に崩れ落ち、そのまま目を閉じて動かなくなった。
これを見たミアツは動揺し、歩行者の中にも心配して立ち止まる人が何人かいた。助けを求めることもできたが、ミアツはアニプラから逃げるために自力で〈彼〉の体を起こし、走行中の無人タクシーを捉まえて乗り込んだ。
「どちらまで行かれますか?」フロントガラスに文字が表示されると同時に、音声が聞こえてきた。
「ここから近い宿泊施設に行って!」とミアツ。
「付近に宿泊施設が12件あります。どちらに―」
「その中で一番セキュリティーがしっかりしてる場所にして!急いでッ!」
「かしこまりました。」
無人タクシーは最短ルートを通って、襲撃された地点から三百メートル離れたホテルに到着した。ミアツはドアに設置されている小さな赤い四角形に腕時計を近づけ、数秒経つと四角形が煌々と光ってドアが開いた。
「ご利用ありがとうございます。」
ミアツは急いで<彼>をタクシーから降ろし、ホテルのドアで待機していた人型ロボットを呼んだ。ドアマン・ロボットは軽々と<彼>を持ち上げてホテル内へ運んだ。
***
ナマズの死体を車から降ろし、アニプラの部下たちが車内を徹底的に調べ上げた。
車のあらゆる部品を透視スコープで検査したが、目を引く隠しポケットなどはなかった。質素な車内にあったのは、小さなフラッシュメモリーだけであった。他の発見といえば、車に付けられていた番号から所有者が判明したくらいであった。この所有者は大型商業施設『癒着』のカフェに勤める男性であった。
「そいつを連れて来い。」アニプラが隣にいた男に言った。
男は3つに折り畳むことができるタブレット端末を取り出し、施設内を捜索していた仲間に車の所有者の情報を送った。
「それでメモリースティックの中身は?」アニプラが同じ男に尋ねた。
「暗号化されているため、解析に時間が掛かっています。しかし、これだけの暗号がされているということは、これは間違いなく例の物でしょう。」
「そうか…」犬人間の口元が緩んだ。
(ようやく休みがもらえそうだな…)アニプラはカズヤンに急いで報告を済ませ、犬人間種が運営しているクラブへ行こうと考えた。(しかし、逃げた二人を追う必要もあるな。それはナルホーたちに任せるとするか…)
「ナルホー。」アニプラが隣にいる男を見た。「俺はカズヤン様にこの事を報告する。お前はここで指揮を執り、逃げた二人を捕まえろ。」
「分かりました。」
アニプラはその場を後にしようとしたが、ナルホーが彼を呼び止めた。
「アニプラ様!その二人は生け捕りにすべきですか?」
犬人間が肩越しに部下を見た。「お前の好きにしろ。」
「ありがとうございます。」ナルホーは歩き去るアニプラの背中に向けて一礼した。
右頬に火傷を持つナルホーは商業施設の監視カメラの映像にアクセスし、エヌラたちの姿を探し求めた。彼の使用した人工知能は与えられた情報を基に、それと一致する人物を映像から抽出した。
作業に夢中になっていた彼の許に、二人の男に連れられたタキシード姿の男がやって来た。
「彼が車の所有者ですか?」タブレットから顔を上げずにナルホーが言った。
「はい。」男の一人が答えた。その頃、壊れた自分の車を見たタキシードの男は唖然としていた。
「では、まず歯から抜いて行きましょう。」
しばらく順調に歩き続けていた〈彼〉であったが、突然の頭痛に襲われて歩くスピードを落とした。頭痛は次第に激しくなり、吐き気を催すほど強さを増した。
(クソッタレめッ!)
「ちょっと待ってよ!」ミアツが〈彼〉の右肩に触れた。
すると、糸の切れた人形のように〈彼〉は地面に崩れ落ち、そのまま目を閉じて動かなくなった。
これを見たミアツは動揺し、歩行者の中にも心配して立ち止まる人が何人かいた。助けを求めることもできたが、ミアツはアニプラから逃げるために自力で〈彼〉の体を起こし、走行中の無人タクシーを捉まえて乗り込んだ。
「どちらまで行かれますか?」フロントガラスに文字が表示されると同時に、音声が聞こえてきた。
「ここから近い宿泊施設に行って!」とミアツ。
「付近に宿泊施設が12件あります。どちらに―」
「その中で一番セキュリティーがしっかりしてる場所にして!急いでッ!」
「かしこまりました。」
無人タクシーは最短ルートを通って、襲撃された地点から三百メートル離れたホテルに到着した。ミアツはドアに設置されている小さな赤い四角形に腕時計を近づけ、数秒経つと四角形が煌々と光ってドアが開いた。
「ご利用ありがとうございます。」
ミアツは急いで<彼>をタクシーから降ろし、ホテルのドアで待機していた人型ロボットを呼んだ。ドアマン・ロボットは軽々と<彼>を持ち上げてホテル内へ運んだ。
***
ナマズの死体を車から降ろし、アニプラの部下たちが車内を徹底的に調べ上げた。
車のあらゆる部品を透視スコープで検査したが、目を引く隠しポケットなどはなかった。質素な車内にあったのは、小さなフラッシュメモリーだけであった。他の発見といえば、車に付けられていた番号から所有者が判明したくらいであった。この所有者は大型商業施設『癒着』のカフェに勤める男性であった。
「そいつを連れて来い。」アニプラが隣にいた男に言った。
男は3つに折り畳むことができるタブレット端末を取り出し、施設内を捜索していた仲間に車の所有者の情報を送った。
「それでメモリースティックの中身は?」アニプラが同じ男に尋ねた。
「暗号化されているため、解析に時間が掛かっています。しかし、これだけの暗号がされているということは、これは間違いなく例の物でしょう。」
「そうか…」犬人間の口元が緩んだ。
(ようやく休みがもらえそうだな…)アニプラはカズヤンに急いで報告を済ませ、犬人間種が運営しているクラブへ行こうと考えた。(しかし、逃げた二人を追う必要もあるな。それはナルホーたちに任せるとするか…)
「ナルホー。」アニプラが隣にいる男を見た。「俺はカズヤン様にこの事を報告する。お前はここで指揮を執り、逃げた二人を捕まえろ。」
「分かりました。」
アニプラはその場を後にしようとしたが、ナルホーが彼を呼び止めた。
「アニプラ様!その二人は生け捕りにすべきですか?」
犬人間が肩越しに部下を見た。「お前の好きにしろ。」
「ありがとうございます。」ナルホーは歩き去るアニプラの背中に向けて一礼した。
右頬に火傷を持つナルホーは商業施設の監視カメラの映像にアクセスし、エヌラたちの姿を探し求めた。彼の使用した人工知能は与えられた情報を基に、それと一致する人物を映像から抽出した。
作業に夢中になっていた彼の許に、二人の男に連れられたタキシード姿の男がやって来た。
「彼が車の所有者ですか?」タブレットから顔を上げずにナルホーが言った。
「はい。」男の一人が答えた。その頃、壊れた自分の車を見たタキシードの男は唖然としていた。
「では、まず歯から抜いて行きましょう。」
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