第十一回 [銀河極小戦争]

第 十 一 回










 七人の男が扇形の陣形を保ちながら、壁と同化していた段ボール小屋に銃撃を加えていた。

 すると、段ボール小屋から全身赤タイツ姿の男が現れた。男は這って出てきたが、服装が目立つためにすぐに発見され、彼らの標的となった。

 銃口が向けられる直前、アーマ・ナマズは立ち上がって左端にいた男に接近した。その動きは人間離れしており、近づいてくる全身赤タイツ男に発砲しても、左右に移動して銃弾を回避した。

 他の仲間たちはナマズを追うようにして銃撃を加えたが、ナマズと左端にいる仲間の距離が近づくと引き金から指を離した。下手に深追いをすれば仲間に被害が出るからである。

 距離が1メートルと迫ると、男の持っていた短機関銃の弾倉が底を尽きた。男は急いで腰に取り付けてあった『スタン・フィスト』と呼ばれる、スタンガンとメリケンサックが融合した武器に手を伸ばした。右手がそれに触れると同時に、ナマズの右ラリアットが男の喉を襲った。

 アーマ・ナマズが素早く、左手に握られていたボールペンで男の首を刺し、右手で男を押し退けた。男の首筋から大量の血が吹き出したが、ナマズがそれを浴びることはなかった。彼は次の標的に向かって接近を始めていた。

 だが、ナマズの動きを見た残りの『切り込み隊』メンバーたちは既に陣形を変えていた。彼らは「く」の字に似た隊列を作って、全身赤タイツ男の動きを止めようと再び銃撃を加えた。

 しかし、ナマズは動揺せず、左右の手に握られていたボールペンを両端にいた男たちに向けて素早く投げた。その直後、彼は地面を勢い良く蹴り飛ばしてジャンプし、空中で二回転しながら銃撃を華麗に回避した。

 放たれたペンの一つは右端にいた男の首に、もう一つは左端にいた男の右目に刺さった。

 (何者だ?)『切り込み隊』のリーダー『サストン』がナマズの動きを見て思った。

 ジャンプで攻撃を回避、そして、距離を縮めたナマズは陣形の真ん中にいたサストンの前に下りた。サストンが短機関銃の銃口でナマズの顔面を突こうとしたが、その前に全身赤タイツのナマズが上半身を後ろに下げ、さらに右足で『切り込み隊』リーダーの股間を蹴り上げた。予期せぬ攻撃に彼は前のめりになり、左手で股間を抑えた。

 隊長の危機に残り三人となった部下たちが、一斉にスタン・フィストを取り出してナマズに襲い掛かった。

 全身赤タイツの男はサストンの服を引いて手前に引き寄せ、左から接近して来る男二人の前に置いて盾にした。男たちのスタン・フィストがサストンの後頭部と背中に命中し、衝撃と同時に高圧電流が『切り込み隊』隊長の全身を駆け巡った。

 一方、ナマズの右側にいた男はナマズの隙を見てスタン・フィストを装着した右拳を突き出した。だが、ナマズはサストンを手前に引くと同時に、身を屈めて右側にいた男の両脚を掴んで持ち上げた。バランスを崩した男は後ろに転倒し、後頭部を床に強く打ちつけてしまった。

 この攻撃が終わった頃、全身に電流が流れて気を失ったサストンが崩れ落ちた。姿勢を低くしていたナマズは両手を床に付き、両脚を後方に素早く突き出した。全身赤タイツの男の足が、隊長を攻撃して唖然としていた男二人の股間に叩き込まれた。男たちは股間を両手で抑え、その際にスタン・フィストが触れ、二人は立ったまま数秒間、体を痙攣させた末に倒れた。

 最後にナマズは、後頭部を床に打ちつけた男のスタン・フィストを奪ってそれを相手の股間の上に落とした。男も数秒、体を痙攣させた末に気絶した。

 「ウォーミングアップで終わってしもうたのぅ~」ナマズが倒した男たちを見て呟いた。「どうやら、『ヤヴィン』の使いではないらしいが…」

 額に薄らと汗を浮かべた全身赤タイツのナマズが、穴だらけになった自宅へ引き返した。

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