第十二回 [銀河極小戦争]

第 十 二 回










 全身赤タイツのナマズを見るなり、ミアツが引き金を絞った。しかし、何も起らなかった。

 「ちょっと!アンタ、何やってんのよ!」ナマズがミアツを怒鳴りつけた。

 ミアツは彼の死を予想していたので、驚いて口を大きく開けた。

 「早くここから逃げないと応援が来るかもしれないわよ!」全身赤タイツの男がコタツの下に張付けてあった別の財布をもぎ取った。

 「そうだな…」エヌラが立ち上がった。「逃げよう…」

 彼はミアツが握っている銃を見ないようにして小屋から出た。貴重品を集めたナマズもエヌラを追い、ミアツも急いで銃を革袋に戻して段ボール小屋から飛び出した。

 ナマズが適当に見つけたスピーダーの鍵を解除し、運転席のドアを開けた。

 大きな銃声が地下駐車場内に響き、ナマズの体がスピーダーに叩きつけられた。血と肉片が周囲に飛び散り、エヌラが悲鳴を上げた。

 ミアツが周囲に目を配ると、長い銃身と大きな回転弾倉を備えた拳銃を持つ犬人間を目撃した。

 (あれが噂の『探し屋』?)彼女は急いで座席の陰に隠れた。

 エヌラの悲鳴が車内に響く中、ナマズがどうにかしてスピーダーに乗り込んでエンジンをかけた。

 三人が乗るスピーダーに銃口を向け、アニプラが撃鉄を親指で落としてエヌラに狙いを定めた。

 「うるせぇ野郎だ…」そう呟いて探し屋のアニプラが引き金を絞った。

 しかし、着弾の直前にエヌラがナマズに抱きついて銃弾を回避した。

 (なっ?)

 動揺しながらもアニプラが親指を再び撃鉄に伸ばした時、ナマズが力を振り絞ってスピーダーの自動運転を起動させた。スピーダーのブースターが点火し、車体が少し浮き上がった。

 エヌラは被弾したナマズの体にしがみつき、ミアツはシートベルトを掴んで衝撃に備えた。

 三人を乗せたスピーダーがゆっくりと発進し、加速しながら出口へ向かった。

 (逃がすか!)

 アニプラがスピーダーの運転席に座るナマズの頭に銃を向け、素早く引き金を絞った。しかし、弾が発射されると同時にスピーダーが左折して地上へ上がる通路に出た。

 (クソがッ!)

 アニプラは走りながら銃把の少し上にあるレバーを押し、回転式弾倉を左横に展開させて銃口を上に向けると三つの空薬莢を床に落とした。彼の銃は旧式と言われる火薬式であり、アニプラの物は三発の散弾銃用の銃弾を用いる珍しい様式であった。

 空薬莢を弾き出す間、アニプラは左手で新しい三発の銃弾を掴んで素早く再装填を行なった。そして、彼は逃げるスピーダーに向けて再度発砲した。銃弾は車体に命中したものの、損害を与えることはできなかった。彼らの距離は次第に広がり、スピーダーは既にアニプラから五百メートルは離れていた。

 スピーダーはさらに加速して地上に出ようとしていた。だが、その直前に二台の装甲スピーダーが現れ、エヌラたちを乗せたスピーダーの自動運転装置が減速を開始した。それでも間に合わず、彼らのスピーダーはアニプラの部下が乗ったスピーダーに激突した。

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