Episode 11(終) [英雄たちの戦い]

Episode 11



 カケルは部活のことで思い悩んでいる時、誤って女子トイレに入ってしまったと正直に担当教員に話した。だが、途中で逃げ出したために教員は嘘をついていると思い、400字詰め原稿用紙1枚分の反省文を書くよう命じた。

 この男の凄いところは、その反省文に最近書き上げた歌詞を書いたことである。カケルは素晴らしい詞を書いたと思い、それを反省文に書けば許され、さらに音楽業界に進出できると夢を見ていた。この反省文によってカケルは10枚の反省文を書くことを命じられた。

 一方、エロDVDを持ちこんだことが発覚して没収されたタクヤは、放送部の顧問に注意された後に親へ連絡された。エロDVDの没収、そして、好きな女性の前で辱めを受けた彼は不登校になり、人生に嫌気が差して自殺を考えた。だが、彼はインターネットで見つけた『池上流モテ術』を参考にして自信を取り戻し、再び小日向への強い思いを抱いて復学した。

 ユウタは今回の騒動は全て、期限切れの焼きそばパンを販売した弁当屋の責任だと主張した。しかし、腹痛を起こした後の彼の行動と焼きそばパンに因果関係はないと結論づけられ、彼は400字詰め原稿用紙6枚の反省文を書くことになった。

 このような失態を犯しても、ユウタは吹奏楽部の副団長として定期演奏会に出席した。勿論、指揮者として。彼は楽器を演奏することができない。それは天性の〝不器用さ〟から来るものであった。
 
 「みんな、準備はいいか?」ユウタが部員たちに声をかけた。

 円陣を組む部員たちは首を縦に振った。あの露出事件からユウタと話す部員は30人から2人に減っていた。

 「よしッ!行こうぜぇー!」

 この時のユウタの服装は演奏会のために用意した黄色いTシャツと同色の異様に短いショートパンツであった。Tシャツはサイズが大き過ぎて、ショートパンツを隠すほど長い。ゆえに知らない人が見ればTシャツしか着ていないように見える。

 他の部員たちは、彼の格好がネタなのか、それとも趣味なのか、もう分からなくなっていた。ちなみに、吹奏楽部内でユウタは『露出狂』と呼ばれているが、彼はまだ気付いていない。

 部員たちが担当楽器のある位置へ歩き、準備を整え始める。そして、幕が上がるとユウタが指揮台に登壇した。彼は観客の方へ向き、一礼する。観客の中には当時の事件を知る学生とその保護者がおり、ユウタの格好を見ると動揺が広がった。

 「みなさんッ!」ホールに響く大声でユウタが叫んだ。「定期演奏会へようこそッ!今日は楽しんでくださいねッ!」再び一礼して観客に背を向ける。

 しかし、ユウタは思い出したように振り返った。

 「安心してくださいッ!」ユウタがTシャツを捲り上げた。「履いてますよッ!」

 その直後、ショートパンツがずれ落ちてホールに悲鳴が木霊した。




END


ご愛読ありがとうございました。

ハヤオ・エンデバーの新作に御期待下さい!


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