Episode 10 [英雄たちの戦い]

Episode 10



 (ば、ばッ、バカなッ!)

 タクヤは部活顧問の右手にあるDVDを見て驚きを隠せなかった。

 「君の物なのかい?」額の広い部活顧問が尋ねた。

 全身から冷や汗が吹き出し、心臓が異常なほどに高鳴った。

 (あれがアイツの手にあるということは…俺の持っているDVDは…?)

 「先生、すぐに戻ってきます…」小日向がタクヤの隣を抜けて職員室に入った。

 (小日向さんの前でこのような屈辱をッ!許さん!許さんぞぉー!)

 「部長、やっぱり無かったです。」小日向が戻ってきた。

 「ありがとう。」背の低い放送部の部長が言った。「往生際の悪い男だ…ポケットの物を全部出しなさいッ!」

 タクヤは追い込まれ、穴があれば入りたい気持ちであった。

 「ポケットの中を見せてくれるかな?」部活顧問が押し黙っているタクヤにやさしく話しかけた。

 「な、な、なにも、何も入って、ね、ね、ねぇで、げすよ…」

 「出した方が身のためだよ。」彼の背後にいる小日向が言った。

 (小日向さん…違うんだ…俺は…俺はッ!)

 その時、痺れを切らした放送部の部長がタクヤの制服のポケットに触れ、CDケースを見つけると素早く取り出した。

 「まさかこんな餌で釣れるとはねぇ~」部長がニヤリと笑った。「あの放送もアンタでしょ?」

 タクヤは探偵や刑事に追い詰められる犯人の気持ちであった。

 「ち、違うッ!それは友だちに借してたDVDだッ!中身を確認してみろッ!」タクヤが叫んだ。その鬼気迫る言い方は見苦しく、その場にいた放送部の顧問と生徒は彼が犯人だと悟った。

 「そうかい…」部長がCDケースを開けて中身をタクヤに見せた。そのケースには『引っかかったな、バーカ』と書かれディスクが入っていた。「これが君のDVDかね?」

 (は、嵌められたッ!)

 「い、いや…き、きっと、と、とも、友だちが、な、なか、中身を…」タクヤは言葉を詰まらせた。

 「詳しい話しを聞かせてもらおうか…」

 部活顧問に背中を押されてタクヤは職員室へ連れて行かれた。

To be continued...?

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