Episode 2 [英雄たちの戦い]

Episode 2



 一度は帰宅したタクヤであったが、すぐ学生服に着替えて学校へ急いだ。

 (俺としたことが!)

 午前中にタクヤは友人からエロDVDのコピーをもらった。これはインターネットで探しても見ることができなかった作品だったので嬉しくして仕方が無かった。

 学校が終わると、急いで自宅へ戻ってケースを開けた。だが、ケースは空で、タクヤは友人が入れ忘れたと思ってスマートフォンを手に取った。しかし、電話をかける直前、彼は昼休みに放送室で友人たちと試写したことを思い出した。

 (中身を見られてはいけない!)

 DVDには『ユイとの思い出』というタイトルが書かれており、その他は普通のディスクにしか見えない。

 学校に着くとタクヤは急いで放送室に駆け込んだ。室内には4人の女子生徒がおり、タクヤの姿を見ると驚いて手を止めた。居心地の悪い沈黙が室内に流れ、タクヤも固まって動けなくなった。

 「入部希望の方ですか?」部屋の奥にいた背の低い部長と思われる女子生徒が尋ねた。

 「あ、いや、はのぉ~、ぼ、ぼ、ボクはぁ~、た、た、たに、谷口くんの、と、と、とも、友だち、でしてぇ~」

 タクヤの狼狽え方は半端ではなかった。これは彼が人見知りということではなく、この部室にいる女子生徒の中に好意を寄せている女性がいたからであった。タクヤはその女性と一度も話したことがない。

 (これは思わぬチャンスかもしれないぞ!)

 「谷口くんは家の事情で、今日は来れないと言ってましたよ。」先ほどと同じ女子生徒が言った。

「そ、そ、そう、ですかぁ~」斜め右前方にいる女子生徒をチラ見してタクヤは頭をかいた。視線を送った女性こそが、好意を寄せている人物であった。しかし、彼女はタクヤの視線に気付いていなかった。

 「何か御用ですか?」部長らしき女子生徒が不機嫌そうな顔をして尋ねた。

 「い、いえ、ぼ、ぼ、ぼく…い、いや、し、し、しつ、しつれ、失礼しましたッ!」タクヤは急いで放送室から出た。ドアに背を預けて彼は目を閉じた。

 (あんな近くで…小日向さんを見られるなんて…)

 いつも遠くから見ていたため、好きな女性を近くで見られただけでタクヤは嬉しかった。

 (放送部とは知らなかったなぁ~。谷口の奴、小日向さんのこと全然教えてくれなかったし…どうせだったら、俺も放送部に―)

 学校の正門を通り抜けようとした時、タクヤは本来の目的を思い出した。

 (DVDッ!)

 彼は再び放送室へ戻ろうとしたが、そこにはまだ4人の部員がいる。そして、その中の1人は好意を寄せている女性である。

 (DVDは部室の奥にあるプレイヤーの中にある。もし、彼女たちがあれを見たら、俺の学生生活も終わり、小日向さんに嫌われる…それだけは阻止しなければッ!)



To be continued...?

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Episode 1Episode 3 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。