電脳戦争に関する認識(2) [電脳またはサイバー?]

電脳(サイバー)空間の定義
電脳空間と電脳戦争に関する報道はあるものの、これらの単語の定義はあまり知られていない。また、電脳空間は21世紀において必要不可欠なものとなったが、この単語の意味を正確に知っている人は少ない。国際連合でさえも電脳空間とインターネットの違いを理解していない。この国際機関は電脳空間を「インターネットに接続されているコンピューターや通信施設、データーベース、情報機器に関与している国際的システムであり、一般的にネットとして知られている」と定義している (Winterfeld and Andress, 2014, p17)。ところが電脳空間はインターネットとは異なるものである。アメリカ国防総省(DOD: the Department of Defense)による定義の方が国連よりも電脳空間の本質を説明しているかもしれない。2010年、アメリカ国防省は電脳空間を「インターネット、通信ネットワーク、コンピューターシステム及び処理装置、制御装置を含む相互依存ネットワークから構成されている情報環境[デジタル空間]内の国際的領域」と定義した (Winterfeld and Andress, 2014, p16-17)。また、アメリカ・アラスカ州議員であったテッド・スティーブンスは自国の国防総省よりも簡潔に電脳空間について説明している。彼は電脳空間を「管(チューブ)の集まり」だと定義した (Singer & Friedman, 2014, p12)。スティーブンスの言う通り電脳空間はネットワークに接続するための管または道路に近い。ワールド・ワイド・ウェブまたはインターネットは多くの人々が情報を送受信するために使うオンラインアプリケーションと定義することが可能である。しかし、電脳空間はウェブサイトの閲覧または電子メールの送受信のための管または道路と考えられている。このように電脳空間に関する議論は多いが、未だにその定義は曖昧のままである (Efferink, 2013 and Francois, 2013)。


電脳戦争の定義
   電脳空間の定義が曖昧であるにも関わらず、電脳戦争の定義は電脳空間よりも明確である。アメリカのシンクタンク、ランド・コーポレーションによれば、電脳戦争は「国家または国際的組織が他国のコンピューターや情報ネットワークに損傷を与える攻撃またはそれを試みる行為」と考えられている (Rand Corporation, 2014)。多くの人々は電脳戦争が新しい形の戦争だと思うかもしれない。しかしながら、この戦争は伝統的な物理的紛争と類似している。コンピューターウィルスまたはサービス妨害(DOoS: Distributed Denial of Services)などによる電脳攻撃は日常生活と軍事活動に必要な交通機関や通信施設の遮断と同じ性質を持っているからである。言い方を変えれば、電脳攻撃の被害は電脳空間だけではなく、その空間に依存している物理的空間にも大きな影響を及ぼすのである。政府、軍隊、企業、市民に影響を与えた電脳戦争の例として2008年のグルジア・ロシア危機がある。2008年8月、ロシアは地政的、法的、文化的、そして、経済的問題からグルジアに侵攻した。この侵攻の前にグルジアの政府と軍隊、経済、民間の通信システムに関連していた54のウェブサイトがロシアから電脳攻撃を受けていた。このロシアによる攻撃の結果で生じたものは混沌であった。ロシアの戦車や戦闘機がグルジアに侵攻してきた時、グルジア国民はロシアの電脳攻撃によってインターネットに接続することができず、何故ロシアの戦車と戦闘機がグルジア国内にいるのか分からなかった (Hollis, 2011, p2)。この事例は電脳攻撃がどのように電脳空間と物理的空間に影響を与えるかを見せてくれた。しかし、21世紀における多くの電脳戦争はグルジア・ロシア危機のようなものだけではない。


<参照>
・Efferink, L. (2013). What do you mean by cyberspace, internet and cybergeopolitics. Geo Means.
・Francouis, C. (2013). What is war in the digital realm? A reality check on the meaning of   "cyberspace". Scientific America.
・Hollis, David. (2011). Cyberwar case study: Georgia 2008. Small Wars Journal.
・Rand Corporation. (2014). Cyber Warfare. Rand Corporation.
・Singer, P. W., & Friedman, A. (2014). Cybersecurity and cyberwar: what everyone needs to know.    New York: Oxford University Press.
・Winterfeld, S., & Andress, J. (2012). The basics of cyber warfare understanding the fundamentals of    cyber warfare in theory and practice. S.l.: Syngress.

(追記:
 ハヤオのつまらないものシリーズですが、原案と構成はハヤオで、調べ物に関しては二人でやりました。日本文でいいのがなかったので、英語の本やウェブを翻訳しながら書きました。
 電脳[サイバー]の定義ですが、非常に難しいです。私たちはもう電脳空間は情報を流す『水道管』で、それに繋がっているのが個々の端末やインターネットだと解釈しています。この定義には異論があるでしょうが、事実、電脳空間の定義は日々変わっているので、私たちの解釈[今亡きアメリカ・アラスカ州の議員さんの発想に基づく]は絶対のものではありません。
 電脳戦争の定義で2008年のグルジア・ロシア危機について触れましたが、この件に関しては諸説がありまして…ロシアの電脳部隊による仕業説とロシアのハッカーたちによる仕業説です。電脳攻撃の根源を探ることもできますが、もし、ハッカーなり電脳部隊の技能が良ければ偽の証拠を置いたり、複数のサーバーを経由してたりして攻撃することが可能なので”本物の犯人または敵”を突き止めるのは容易ではないんです。
 次回はイランと韓国で起こった電脳攻撃について触れたいと思います。第3回の公開は8月7日を予定しております。)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。