最終回 [銀河極小戦争]
最 終 回
スペース・ア・ゴー・ゴーに対する攻撃は全銀河に衝撃をもたらした。
カズヤンはアニプラに説明を求めようとしたが、部下はクラブで死亡しており、彼の腹心であるナルホーが代わりに応じた。
「何事なんだねぇ!」顔に汗を浮かべたカズヤンがナルホーを怒鳴りつけた。
「申し訳ありません。アニプラ様が席を外している間に何者かがドローンで攻撃を―」
「それは知ってるつうのォ!」カズヤンが部下の話を遮って再び怒鳴った。「その理由が知りてぇんだよぉ〜」
このやり取りを予想していたナルホーは怯んでいなかった。最初の発言はアニプラに責任を負わせ、自身に降りかかるであろう処刑を逃れるためのものであった。
「犯人に目星はついております。そして、現在追跡中です。」とナルホー。
「ホンマかいなァ!んじゃ、ソイツの写真を全銀河に流さんかいな!俺に逆らったらこうなるつう、見せしめみしたるぅ!」
「直ちに取りかかります。」
「んじゃ、今日からお前が探し屋部隊の指揮を執れ。ええな?」
「ありがたきお言葉―」
ナルホーの返事を聞く前にカズヤンは通信機の電源を落とした。
***
ナマズの死体を引き取るため、ミアツは一足先に死体安置所に来ていた。
スペース・ア・ゴー・ゴーに姿を見られないように彼女は、帽子を目深にかぶって通りを歩く人と目を合わせないようにした。
「待った?」
背後から声をかけられてミアツは驚き、素早く背後に視線を向けた。そこには黄色い歯を見せて笑うエヌラがいた。
(生きてた!)スケべ男の死を予期していたミアツは喜んだ。
「アイツらはどうなったの?」
「ナマズの仇は取ったよ。んで、ここにいた?」エヌラが死体安置所の入り口を見た。
「これから確認するところ。ここにいなかったら、ナマズさんはアイツらに囚われてるかも…」
「病院の確認は?」
「したけど、手がかりなし。」
「じゃ、行くしかねぇてばよ!」
二人が受け付けに問い合わせると、カウンターにいた男が眉をひそめた。ミアツは男が何か知っていると思い、カウンターに両手を置いて身を乗り出した。
「ここにいるんですね。」
「いましたよ。でも、廃棄処理場に送りました。」
エヌラとミアツは驚いて口を大きく開けた。
「あの人は人ですよ!」ミアツはスペース・ア・ゴー・ゴーの非道さに苛立った。
「人?」受付の男が聞き返した。「あれはアンドロイドですよ。」
「そんなバカな…」エヌラが両膝から崩れ落ちた。
「何かの手違いじゃないんですか?」とミアツ。
「ちゃんとスキャンしましたよ。人間ぽかったですが、あれは正真正銘のアンドロイドでした。」
ミアツは混乱しながらもしゃがみ、エヌラの肩に手を乗せた。「廃棄処理場に行ってみよ。」
「んだなす…」
廃棄処理場に着いた時、ナマズの死体が入ったカーゴの焼却が行われようとしていた。ギリギリのところでミアツがそれを中断させ、エヌラがナマズの死体をカーゴから掘り起こした。
「ナマズよぉ〜」エヌラの目に涙が浮かんだ。
その間にミアツはナマズのうなじを指で触れ、アンドロイドのメモリーディスクが収められているスイッチを探した。彼女はそれが無いことを祈りながら指先の感覚を研ぎ澄ませた。そして、見つけたくない物に触れ、心臓を締め付けられた。固唾を飲んでミアツはスイッチを押し、その少し上から小さな半円状の物が飛び出してきた。
「この中にナマズさんの―」口を開いたものの、ミアツはメモリーディスクを見て絶句した。中身が入っていなかったのだ。
「どったんだよ!」とエヌラ。
「メモリーがない。抜かれてる…?」
「抜かれてるって…こんな時に下ネタかよ!」エヌラがミアツの肩に軽くパンチを入れた。
「中身がないの!アイツらが盗んだに違いないッ!」
「何のために?」エヌラが不思議そうにメモリーディスクを見た。
「私たちを探すために決まってるでしょ!」
「にしては、時間がかかり過ぎじゃねぇ?あんだけ派手に動いた後だぜ。」
(確かに…捜索している割にはナマズさんの死体にすんなり近づけた。だとしたら、ナマズさん自身がメモリーを消去した?でも、ディスク自体がない。もしかして、初めから入ってなかったの?)
「アイツらが俺たちを探しているなら、逃げなきゃ不味いんじゃねェ?」
「でも、できればナマズさんのメモリーだけでも…」ミアツは念のためにナマズのうなじを探り、ディスクが引っ掛かっていないか確認した。しかし、何も見つからなかった。
(メモリーディスクがなければ起動はできない。)ミアツは考えた。(遠隔操作なら起動できるかもしれない。でも、誰が何の目的で?)
「おい!急ぐぞい。」エヌラがナマズの死体を持ち上げた。「追手も迫ってるらしいし、ナマズの謎もあるみたいだし…」
「そ、そうね…」様々な憶測が頭の中を駆け巡り、ミアツは適当に返事を返した。
二人は急いで廃棄処理場を後にした。
第一章『銃使い』 完
スペース・ア・ゴー・ゴーに対する攻撃は全銀河に衝撃をもたらした。
カズヤンはアニプラに説明を求めようとしたが、部下はクラブで死亡しており、彼の腹心であるナルホーが代わりに応じた。
「何事なんだねぇ!」顔に汗を浮かべたカズヤンがナルホーを怒鳴りつけた。
「申し訳ありません。アニプラ様が席を外している間に何者かがドローンで攻撃を―」
「それは知ってるつうのォ!」カズヤンが部下の話を遮って再び怒鳴った。「その理由が知りてぇんだよぉ〜」
このやり取りを予想していたナルホーは怯んでいなかった。最初の発言はアニプラに責任を負わせ、自身に降りかかるであろう処刑を逃れるためのものであった。
「犯人に目星はついております。そして、現在追跡中です。」とナルホー。
「ホンマかいなァ!んじゃ、ソイツの写真を全銀河に流さんかいな!俺に逆らったらこうなるつう、見せしめみしたるぅ!」
「直ちに取りかかります。」
「んじゃ、今日からお前が探し屋部隊の指揮を執れ。ええな?」
「ありがたきお言葉―」
ナルホーの返事を聞く前にカズヤンは通信機の電源を落とした。
***
ナマズの死体を引き取るため、ミアツは一足先に死体安置所に来ていた。
スペース・ア・ゴー・ゴーに姿を見られないように彼女は、帽子を目深にかぶって通りを歩く人と目を合わせないようにした。
「待った?」
背後から声をかけられてミアツは驚き、素早く背後に視線を向けた。そこには黄色い歯を見せて笑うエヌラがいた。
(生きてた!)スケべ男の死を予期していたミアツは喜んだ。
「アイツらはどうなったの?」
「ナマズの仇は取ったよ。んで、ここにいた?」エヌラが死体安置所の入り口を見た。
「これから確認するところ。ここにいなかったら、ナマズさんはアイツらに囚われてるかも…」
「病院の確認は?」
「したけど、手がかりなし。」
「じゃ、行くしかねぇてばよ!」
二人が受け付けに問い合わせると、カウンターにいた男が眉をひそめた。ミアツは男が何か知っていると思い、カウンターに両手を置いて身を乗り出した。
「ここにいるんですね。」
「いましたよ。でも、廃棄処理場に送りました。」
エヌラとミアツは驚いて口を大きく開けた。
「あの人は人ですよ!」ミアツはスペース・ア・ゴー・ゴーの非道さに苛立った。
「人?」受付の男が聞き返した。「あれはアンドロイドですよ。」
「そんなバカな…」エヌラが両膝から崩れ落ちた。
「何かの手違いじゃないんですか?」とミアツ。
「ちゃんとスキャンしましたよ。人間ぽかったですが、あれは正真正銘のアンドロイドでした。」
ミアツは混乱しながらもしゃがみ、エヌラの肩に手を乗せた。「廃棄処理場に行ってみよ。」
「んだなす…」
廃棄処理場に着いた時、ナマズの死体が入ったカーゴの焼却が行われようとしていた。ギリギリのところでミアツがそれを中断させ、エヌラがナマズの死体をカーゴから掘り起こした。
「ナマズよぉ〜」エヌラの目に涙が浮かんだ。
その間にミアツはナマズのうなじを指で触れ、アンドロイドのメモリーディスクが収められているスイッチを探した。彼女はそれが無いことを祈りながら指先の感覚を研ぎ澄ませた。そして、見つけたくない物に触れ、心臓を締め付けられた。固唾を飲んでミアツはスイッチを押し、その少し上から小さな半円状の物が飛び出してきた。
「この中にナマズさんの―」口を開いたものの、ミアツはメモリーディスクを見て絶句した。中身が入っていなかったのだ。
「どったんだよ!」とエヌラ。
「メモリーがない。抜かれてる…?」
「抜かれてるって…こんな時に下ネタかよ!」エヌラがミアツの肩に軽くパンチを入れた。
「中身がないの!アイツらが盗んだに違いないッ!」
「何のために?」エヌラが不思議そうにメモリーディスクを見た。
「私たちを探すために決まってるでしょ!」
「にしては、時間がかかり過ぎじゃねぇ?あんだけ派手に動いた後だぜ。」
(確かに…捜索している割にはナマズさんの死体にすんなり近づけた。だとしたら、ナマズさん自身がメモリーを消去した?でも、ディスク自体がない。もしかして、初めから入ってなかったの?)
「アイツらが俺たちを探しているなら、逃げなきゃ不味いんじゃねェ?」
「でも、できればナマズさんのメモリーだけでも…」ミアツは念のためにナマズのうなじを探り、ディスクが引っ掛かっていないか確認した。しかし、何も見つからなかった。
(メモリーディスクがなければ起動はできない。)ミアツは考えた。(遠隔操作なら起動できるかもしれない。でも、誰が何の目的で?)
「おい!急ぐぞい。」エヌラがナマズの死体を持ち上げた。「追手も迫ってるらしいし、ナマズの謎もあるみたいだし…」
「そ、そうね…」様々な憶測が頭の中を駆け巡り、ミアツは適当に返事を返した。
二人は急いで廃棄処理場を後にした。
第一章『銃使い』 完
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